もう8年間、2週間ごとに通ってくれていることになる。薬局で漢方薬を求めてこんなに律義に通ってくださる方は珍しい。
この方が8年前にやってこられた目的は唯一、耳鳴りを何とかしてほしいと言う事だった。熱心に耳鼻科に通っていて、そこでついでに血圧の薬ももらっていた。血圧の薬は飲めば当然下がるが、耳鳴りは全く好転しなかった。そこで漢方薬も併用してみようと思われたみたいだ。
耳鳴りの治療は難しいが、この方の原因は、僕は耳ではなく首から上の血流不全だと思った。そうした方針で漢方薬を服用していただいていると、ゆっくりと、本当にゆっくりと改善していって、数年で完全に気にならなくなった。
数年もよく漢方薬を飲んでくれたなと思うが、また、その後数年、欠かさず飲んでくれている理由は、お医者さんに血圧の薬をどんどん強いものに変えさせられてきたからだ。少し高くなればすぐ強い薬に変えられたそうで、そのことに不安を抱いていた。
ところが僕の耳鳴りのために作った漢方薬で耳鳴りどころか、血圧も上がらなくなり、下手をしたら高校生かと言うくらいに低い値を出すようになった。
70代後半になっても、病院の薬は1種類だけ。不調はこの数年何も感じたことがない。来るたびに血圧を測り幸せそうに漢方薬を持って帰る。
ところが今朝、薬局に入ってきたときにいつものように「調子はどう?」と尋ねると、一瞬間を置いて「元気です」と答えた。この一瞬の間に僕は違和感があったので「何かあったの?」と尋ねると、意を決したようにしゃべりだした。息子さんの体調不良についてだった。ヘルペス後遺症で痛がっているみたいで、もう半年目に入るのに全く痛みが引かないそうだ。40歳代の方がヘルペスにかかり後遺症で苦しむ?5種類薬を飲んでいてその中の一つが、冷え性の方の神経痛の漢方薬。
僕なら当然免疫を上げる漢方薬にする。神経痛の痛みとヘルペスの痛みは構造が違うから、冷え性の神経痛の漢方薬を飲んでも効くはずがない。効能書きに神経痛と書いているからお医者さんは選択しているのだろうが、これではいつまでも治らないだろう。
心配の種を僕に吐露できたこと。そしてヘルペス後遺症の漢方薬を僕が作れることを伝えると、いつもの笑顔を取り戻した。
8年間も会っていたら、一瞬の顔の表情の変化さえ見逃さないでおれるのだと、時の経過の重みを感じた。所詮田舎の薬局だから大したことはできないが、こうして僕は生かされているのだと、感慨深かった。